キリル文字
ロシア語で使われている文字は、「ロシア文字」もしくは「キリル文字」と呼ばれる、英語とかに使うラテン文字や、数学とかで出てくるギリシャ文字と同系統の文字です。キリル文字はギリシャ文字の孫にあたり、同じくギリシャ文字の孫であるラテン文字とはいとこ関係にあります。キリル文字は、同じ孫でもラテン文字よりかなりギリシャ文字に近く、ギリシャ文字を知っているとかなり覚えやすいです。ラテン文字とは、「形は似ているけと発音が違う」という文字がかなりあるので、注意が必要です。 キリル文字は、使われている言語や使われていた時代によって、文字の数や種類、発音に違いがありますが、現代ロシア語で使われているのは以下の33文字(32文字とも見なせるかも?)で全部です。この33文字は「ロシア文字」として昔から日本語のフォントの中に入ってるので、HPとかでも文字化けを心配せずに使えます。以下ではラテン文字やギリシャ文字との関連も含めてキリル文字の説明を書いていますが、余分なことも大量に書いてあると思うので、適当に読み飛ばした方がいいかもしれません。但し、文字そのものと発音は全部覚えましょう。(この場でただちに覚えることは難しいと思いますが、この場で覚えなくても、文字と発音をメモ帳にでもメモしておいて、それと見比べながらキリル文字を読んでいけば自然に読めるようになってくると思います。) なお、キリル文字は、通常の書体では大文字と小文字はほとんどの文字でほぼ同じ形ですが、イタリック体(斜め書体)では筆記体的な要素が入ってくるので、かなり形が違います。特に「и」「п」「т」のイタリック体は、ラテン文字の「u」「n」「m」と同じ形になるので、イタリック体じゃなくするとどの文字になるかには十分注意する必要があります。t.A.T.u.の日本版ロシア語CDではたまたまイタリック体は入っていませんが、イタリック体はよく出てくる書体なので、余力があったら覚えてみましょう。 t.A.T.u.のロシア語CDには筆記体のキリル文字も入っていますが、これはイタリック体を覚えた程度で読めるような代物ではありません(私も読めません)。筆記体を読みたい方は、ご自分でご研究ください(ぉぃ |
Roman | Italic | 音 | 説明 | ||
---|---|---|---|---|---|
a | アー(а, a)。母音の「ア」。ラテン文字のAやギリシャ文字のΑ(アルファ。小文字はα)と同じ形です。 | ||||
b | ベー(бэ, be)。バ行の子音の「b」。唇を閉じた状態から破裂するように開いて発音します。ギリシャ文字のΒ(ベータ。小文字はβ)を変型したものと思われ。 | ||||
v | ヴェー(вэ, ve)。英語とかにある、下唇に軽く歯を当てて発音する子音の「v」。通常の書体では小文字は「В」をそのまま小さくしたものなので注意しましょう。ギリシャ文字のΒ(ベータ。小文字はβ)が元になっています。ギリシャ文字では「b」と「v」の区別をしないため、「b」と「v」で登場頻度の高い「v」の方にΒ(ベータ)と同じ形を採用したんだと思います。なお、ラテン文字の「v」は、元々はウ(u)の発音だったものを、子音のウ(w)、更には「v」の音に当てはめたものです。 | ||||
g | ゲー(гэ, ge)。ガ行の子音の「g」。ギリシャ文字のΓ(ガンマ。小文字はγ)と同じ形です。 | ||||
d | デー(дэ, de)。ダ行(ヂ、ヅを除く)の子音の「d」。ギリシャ文字のΔ(デルタ。小文字はδ)が元になっており、書体によっては「Δ」のようにも書きます(例えば「200ポ・フストレーチノィ」のCDケース裏面の左上にある「ΔАННЫЕ ОБ АРЕСТЕ」の最初の「Δ」は、「Д」の文字です)。なお、筆記体では大文字は「D」の筆記体と似た形に、小文字は「g」の筆記体と似た形になります。 | ||||
ye | イェー(е, ye)。「エ(э, e)」の前に子音のイを加えたもので、ヤ行の「イェ」に近い音です。ラテン文字のEやギリシャ文字のΕ(エプシロン。小文字はε)と同じ形ですが、ロシア語の場合母音のeがでてくる時はほとんどの場合子音のイが加わった「イェ」の音になっているので、Εの文字で軟母音の「イェ」を表すようになったんだと思います。 | ||||
yo | ヨー(ё, yo)。「オ(о, o)」の前に子音のイを加えたもので、ヤ行の「ヨ」に近い音です。еの上に二つ点がついたものですが、上の点は普通は省略され(例えば200ポ・フストレーチノィの最初の曲「ザチェム・ヤー(ЗАЧЕМ Я)」の二聯目の三行目の最後の単語「найдет」のеは、ёの上の点を省略したものです)、また辞書の文字順等ではеとёは同じ文字として扱われます。ёは文法的な性質もеに似ており、еと同じような場所に出てくる(еと母音交換みたいなのを起こす場合も少なくない)ので、ロシア語話者にとっては「イェー」と「ヨー」が同じ文字になるのは都合が良いものと思われますが、学習者はどちらか注意する必要があります。 | ||||
zh | ジェー(же, zhe)。「シュ(sh)」の有声音で、英語のmeasureやvisionの「s」の音に近いです。舌を上の歯ぐきに当てずに発音する音で、上の歯ぐきに舌を当てて破裂するように発音する日本語のジャ行音とは違う音です。ラテン文字にもギリシャ文字にも似た文字はないので、そのまま覚えましょう。 | ||||
z | ゼー(зэ, ze)。「ス(s)」の有声音で、子音の「z」。舌を上の歯ぐきに当てずに発音する音で、上の歯ぐきに舌を当てて破裂する日本語のザ行音とは違う音です。ラテン文字のZの筆記体とやや似た形をしており、ギリシャ文字のΖ(ゼータ。小文字はζ)が変型したものだと思われます。 | ||||
i | イー(и, i)。母音の「イ」です。イタリック体の小文字は「u」のようになるので注意しましょう。昔は「H」のように書いていたようで、発音は微妙に違いますが、ギリシャ文字のΗ(エータ。「エ」の音を表す。小文字はη)と同じ形になります。なお、現在のキリル文字の「Н」の文字は「n」の音を表します。(昔は「n」を表す文字を「N」のように書いていたのが、後に真ん中の棒が反時計回りに45度回転して「Н」と書くようになったので、従来「i」の音を表していた「H」も真ん中の棒が45度回転して「И」にしたものと思われます。)で、謎はラテン文字の「H」が何でハ行の子音を表すか、ということです……。 | ||||
y | イー・クラトコエ(и краткое, i kratkoye)。ヤ行の子音である子音の「イ」で、ロシア語では主に母音の後につけて二重母音のように使います。「イー・クラトコエ」という文字名はロシア語で「短いイ」という意味で、文字もиの上に短い音を示す∪のような記号をつけたものとなっています。 | ||||
k | カー(ка, ka)。カ行の子音の「k」。細部は微妙に違いますが、ラテン文字のKやギリシャ文字のΚ(カッパ。小文字はκ)とほぼ同じ形です。小文字は大文字をそのまま小さくしたものとなります。 | ||||
l | エル(эл, el)。エリ(эль, el')と呼ぶこともあるようです。英語等にある、舌を上の歯ぐきに当てて発音する子音の「l」。日本語のラ行音とは違う音です。ギリシャ文字のΛ(ラムダ。小文字はλ)が元になっており、書体によっては「Λ」のようにも書きます(例えば「200ポ・フストレーチノィ」のCDケース裏面の下半分にある指の指紋(左上のを除く)の上にある「ΛЕВАЯ РУКА」の最初の「Λ」は、「Л」の文字です)。 | ||||
m | エム(эм, em)。マ行の子音の「m」。ラテン文字のMやギリシャ文字のΜ(ミュー。小文字はμ)とほぼ同じ形ですが、小文字も大文字と同じ形であることに注意しましょう。小文字をラテン文字のように「m」と書くと、タ行の子音の「т」のイタリック体になってしまいます。 | ||||
n | エヌ(эн, en)。ナ行の子音の「n」。昔は「N」のように書いていたようで、ラテン文字のNやギリシャ文字のΝ(ニュー。小文字はν)と同じ形になります。小文字は大文字をそのまま小さくしたようになります。現在の「Н」は、「N」の真ん中の棒を反時計回りに45度回転させたものです。(この関係で、従来「i」の音を表していた「H」の文字も真ん中の棒が45度回転し、「И」の文字になったようです) | ||||
o | オー(о, o)。口をすぼめて発音する母音の「オ」。口を開き気味にして発音する日本語のオとはやや異なります。ラテン文字のOや、ギリシャ文字のΟ(オミクロン。小文字もο)と同じ形です。 | ||||
p | ペー(пэ, pe)。パ行の子音の「p」。ギリシャ文字のΠ(パイ。小文字はπ)と同じ形です。イタリック体の小文字は「n」のようになるので注意しましょう。なお、ラテン文字のPは、ギリシャ文字のΠが変形したものです。 | ||||
r | エル(эр, er)。いわゆる巻き舌の「r」で、喉の奥のほうで「ルルル」と震えるように発音します。日本語のラ行音や英語のr音とはやや異なります。ギリシャ文字のΡ(エル、小文字はρ)と同じ形です。(ラテン文字のPは、上記のようにΠが変形したものですが、ラテン文字のRは、かのようにして生まれた子音の「p」を表すPと区別するために、従来「r」を表していた「P」に線を一つ加えたものらしいです。) | ||||
s | エス(эс, es)。サ行の子音の「s」。ま、英語とかでも「C」の字が「s」の音を表すことがあるので、これもそれみたいなもんだと覚えましょう。 | ||||
t | テー(тэ, te)。タ行の子音の「t」。ラテン文字のTやギリシャ文字のΤ(タウ、小文字はτ)と同じ形です。通常の書体の小文字は大文字をそのまま小さくしたもので、またイタリック体の小文字は「m」のような形になるので、注意しましょう。 | ||||
u | ウー(у, u)。口をすぼめて突き出す母音の「u」。口をすぼめず且つ突き出さない日本語のウとはやや異なります。ギリシャ文字のΥ(ウプシロン。小文字はυ)が由来だと思われます。ラテン文字のYも、昔は「ユ」という、微妙に「ウ」と似た音を表していたようです。Уの下の棒を縦線にして「Y」のようにすると、モンゴル語等で使う別の文字になってしまうので注意しましょう。 | ||||
f | エフ(эф, ef)。英語等にある、下唇に軽く歯を当てて発音する子音の「f」。ギリシャ文字のΦ(ファイ。小文字はφ)と同じ形です。 | ||||
kh | ハー(ха, kha)。喉の奥で「フ」と発音する子音の「kh」。kの口でhの発音、といった感じの、日本語や英語にはない発音です。ドイツ語のBach(バッハ)のch、スコットランド語のloch(ロッホ)のch、文章作成ソフトTeX(テフ)のX等が近いようです。ギリシャ文字のΧ(カイ、χ)と同じ形をしており、また「x」の文字は、この「ハー」の音を表す発音記号としても使われています。 | ||||
ts | ツェー(це, tse)。ツ、ツァ、ツォ等の子音の「ts」。ラテン文字やギリシャ文字には特に似た文字はないので、そのまま覚えましょう。 | ||||
ch | チェー(че, ch'e)。英語のchanceのchに似た子音の「ch」。日本語のチャ行の子音よりもやや強い感じがあります。ラテン文字やギリシャ文字には特に似た文字はないので、そのまま覚えましょう。 | ||||
sh | シャー(ша, sha)。英語のEnglishのshに似た子音の「sh」。日本語のシャ行の子音よりも「シュ」といった感じが強く出ています。ギリシャ文字のΣ(シグマ、小文字はσ)やラテン文字のSと本当は同系統だと思われますが、パッと見た目には形は全然違うので、そのまま覚えましょう。 | ||||
shch | シシャー(ща, sh'sh'a)。やや長めに、イっぽい音を混ぜて発音する「sh」。静かにするように注意する時の「シー!」というのが近いらしいです。「shch(シチ)」と発音することもあるようですが、t.A.T.u.は全て「sh'sh'」と発音しています。(「sh'sh'」はモスクワ系の発音で、「shch」はペテルブルク系の発音らしいです。ちなみにユーリャもリェーナもモスクワ出身のようです) | ||||
' | トヴョールドィー・ズナーク(твёрдый знак, tv'ordyy znak)。ерもしくはеръ(ともにイェル, yer)とも言うようです。「硬音記号」という意味で、子音の後につき、母音と子音を分ける分離記号のようなものとして使われます。 | ||||
y | ウィー(ы, y)。еры(イェルィ、yery)とも言うようです。イの口でウと発音するような「ウィ」です。ыは一つの母音であって、「wi」のような半母音+母音でも「ウ+イ」のような二重母音でもありません。ЪとIをつなげて(?)作られた文字っぽいです。 | ||||
' | ミャーフキー・ズナーク(мягкий знак, m'akhkiy znak)。ерь(イェリ、yer')とも言うようです。「軟音記号」という意味で、子音の後につき、前の子音に「イ」っぽい音を加えます(例えばタ行の子音がチャ行の子音っぽく、ナ行の子音がニャ行の子音っぽく、「Л(ル)」が「ЛЬ」で「リ」っぽくなる、といった感じです)。 | ||||
e | エー(э, e)。母音の「エ」。Еをひっくり返してやや変形させたものだと思われます。 | ||||
yu | ユー(ю, yu)。「ウ(у, u)」の前に子音のイを加えたもので、発音は口をすぼめて突き出して発音する「ユ」です。「Ю」の左側の縦棒は「I」を表しており、右側の「O」みたいなのが「ウ」の音を表してるのだと思われます。なぜ「O」が「ウ」なのかは聞かないでください(ぉぃ | ||||
ya | ヤー(я, ya)。「ア(а, a)」の前に子音のイを加えたもので、ヤ行の「ヤ」に近いです。「IA」が変形したもののようで、間違っても「R」をひっくり返したものではありません。ラテン文字の「ia」を筆記体で書き続けてると、いつしか「я」の筆記体っぽくなります。 |
第1課課題 (1)上記のキリル文字とその発音を、何か持ち運びに便利な紙(メモ帳等)に書き写しましょう。キリル文字を覚えれていないうちは、このメモを見ながらロシア語を読んでいきましょう。 (2)「ABCの歌」をキリル文字で作ってみましょう。歌にすると文字も発音とあわせて覚えやすい上に、文字順も覚えられます。 (3)次のキリル文字を読んでみましょう。 |
Copyleft(C) since 2000 Kaeul P. Aki
All rights reversed