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アスペクト・過去形


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アスペクト

 ロシア語の動詞には、不完了体動詞と呼ばれるものと完了体動詞と呼ばれるものがあります。大雑把に言って、不完了体動詞は進行中の動作、複数回の動作、習慣的な動作を表し、完了体動詞は一回きりの動作を表します。現在・未来・過去等の時制とは別の、英語の完了・進行等に似た概念で、アスペクト(相)と呼ばれています。

 完了体動詞と不完了体動詞はペアになっている場合が多く、不完了体動詞に接頭辞をつけたものが完了体動詞だったり、完了体動詞の語尾をちょっと長くしたものが不完了体動詞だったりします。しかし、完了体動詞と不完了体動詞が全然別の形をしていたり、一つの動詞が完了体動詞でも不完了体動詞でもあったり、対応する完了体動詞もしくは不完了体動詞が存在しないかほとんど使われない、意味によって対応する完了体動詞もしくは不完了体動詞が異なる、という場合もあったりします。
 以下に、具体的な完了体動詞と不完了体動詞(いずれも不定形)の対応表を載せます。

意味 不完了体 完了体
疲れる уставать
(ustavat'、ウスタヴァーチ)
устать
(ustat'、ウスターチ)
忘れる забывать
(zabyvat'、ザブィヴァーチ)
забыть
(zabyt'、ザブィーチ)
治療する лечить
(l'ech'it'、リチーチ)
вылечить
(vyl'ech'it'、ヴィーリチチ)
излечить
(izl'ech'it'、イズリチー
デビューする дебютировать
(d'eb'ut'irovat'、ジビュチーラヴァチ)
理解する понимать
(pon'imat'、パニマーチ)
понять
(pon'at'、パニャーチ)
連れて行く сводить
(svod'it'、スヴァジーチ)
свести
(sv'est'i、スヴィェスチー)
話す говорить
(govol'it'、ガヴァリーチ)
сказать
(skazat'、スカザーチ)

 ある動詞が完了体動詞か不完了体動詞かを見た目で判断するのは、必ずしも容易ではありません。とりあえずはそれぞれの動詞が完了体であるか不完了体であるかをしっかり覚え、分からない時は何らかしらの方法で調べるのが良いでしょう。


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過去形

 過去形は、基本的には動詞不定形の最後の「ть」を取り除いて、(文法上の)主語が女性なら「ла」(la、ラ)を、男性なら「л」(l、ル)を、中性なら「ло」(lo、ラ)を、複数なら「ли」(l'i、リ)をつけます。具体的には、

不定形 сказать (skazat'、スカザーチ)
過去女性 сказала (skazala、スカザーラ)
過去男性 сказал (skazal、スカザール)
過去中性 сказало (skazalo、スカザーラ)
過去複数 сказали (skazal'i、スカザーリ)

といったような形になります。動詞によってはアクセントが移動する場合もありますが、最後が「ть」で終わる動詞は基本的にはこのような変化をすると見なしてOKです。
 一方、最後が「ть」で終わらない動詞は、特殊な変化をします。具体例をいくつか挙げると、

不定形 унести (un'est'i、ウニスチー)
過去女性 унесла (un'esla、ウニスラー)
過去男性 унёс (un'os、ウニョース)
過去中性 унесло (un'eslo、ウニスロー)
過去複数 унесли (un'esl'i、ウニスリー)

不定形 мочь (moch'、モーチ)
過去女性 могла (mogla、マグラー)
過去男性 мог (mog、モーク)
過去中性 могло (moglo、マグロー)
過去複数 могли (mogl'i、マグリー)

不定形 идти (idt'i、イッチー)
過去女性 шла (shla、シュラー)
過去男性 шёл (shol、ショール)
過去中性 шло (shlo、シュロー)
過去複数 шли (shl'i、シュリー)

不定形 сойти (soyt'i、サイチー)
過去女性 сошла (soshla、サシュラー)
過去男性 сошёл (soshol、サショール)
過去中性 сошло (soshlo、サシュロー)
過去複数 сошли (soshl'i、サシュリー)

 通常の動詞は過去男性形は「л」で終わりますが、特殊な変化をする動詞の中には過去男性形が「л」で終わらないものもあるので注意しましょう。また、「идти」あるいは「сойти」のような語尾が「-йти」で終わる動詞は、過去形が上の表にあるように-шла, шёл, etc...といった形になります。これらは形が非常に特殊である上によく出てくるので、覚えておくと良いでしょう。

 で、過去形の具体的な意味ですが、まず完了体動詞の過去形は、過去に行われた一度きりの動作、あるいはある状態への変化等を表します。複数回行われた動作の一回一回を指すこともあるようです。英語の現在完了+過去完了みたいなものと見なしても良いかも知れません。以下に具体例を示します。

(例1)
Он сказал. (On skazal.、ン スカザール。「ダシターィ・ダ・スター」より。「он」は三人称単数男性の代名詞でここでは「彼」の意。「сказал」は「言う」「話す」という意味の完了体動詞「сказать」の過去男性形。)
 意味は「彼は言った」です。完了体動詞なので、彼はいつもあることを言っていたのではなく、一度だけあることを言ったことになります。あるいは彼は複数回言っていたかも知れませんが、ここで言いたいのは「彼がある発言をしている状態にあった」ということではなく、ともかくも「彼がある発言をした」ということです。

(例2)
Я устал. (Ya ustal.、ヤー ウスタール。「ダシターィ・ダ・スター」より。「я」は一人称単数の代名詞「私」。「устал」は「疲れる」という意味の完了体動詞「устать」の過去男性形。)
 意味は「私(男)は疲れた」です。ここでは、「私」(過去男性形なので主語の「私」は男)は疲れていない状態から疲れた状態になった、ということを意味します。つまり、疲れていない状態から疲れた状態への変化が過去に一回あった、ということを意味しています。現在は疲れていても疲れていなくてもどっちか分からなくても、文脈次第でOKです。

 次に、不完了体動詞の過去形は、過去に一定期間行われた動作や過去に習慣的に行われた動作、過去に連続して行われた動作等を表します。大雑把に言って、英語の過去形+過去進行形+過去完了進行形といった感じです。

(例3)
Я считала. (Ya sh'sh'itala.、ヤーターラ。「ヤー・サシュラー・ス・ウマー」より。「я」は一人称単数の代名詞「私」。「считала」は「数える」という意味の不完了体動詞「считать」の過去女性形。)
 意味は「私(女)は数えていた」です。ここでは、「私」(過去女性形なので主語の「私」は女)は過去のある期間、ある程度習慣的に何かを数えるということをしていた、ということを意味しています。

(例4)
・Песня занимала. (P'esn'a zan'imala.、ピェースニャ ザニマーラ。「песня」は「歌」を意味する単数女性名詞。「занимала」は「占める」という意味の不完了体動詞「занимать」の過去女性形。)
 意味は「歌は占めていた」です。主語の「歌(песня)」が女性名詞なので、動詞も女性形になっています。過去のある期間、歌が何かの地位を占めていた、ということを意味しています。


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   第八課課題
 例に従って、与えられた単語から文を作り、発音して意味をとってみましょう。動詞はいずれも規則的なものです。

(例)
・метели : 複数名詞「吹雪」
・полететь : 完了体動詞「舞う」「飛ぶ」
→Метели полетели. : ミチェーリ・パリチェーリ。「吹雪が舞った」

(1)
・клип : 男性名詞「(ビデオ)クリップ」
・занять : 完了体動詞「占める」

(2)
・песня : 女性名詞「歌」
・получить : 完了体動詞「得る」

(3)
・Лена : リェーナ(女)
・поступить : 完了体動詞「進学する」

(4)
Юля : ユーリャ(女)
・петь : 不完了体動詞「歌う」

(5)
・они : 三人称複数の代名詞「彼女ら」(もしくは「彼ら」「それら」)
・петь : 不完了体動詞「歌う」


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